Lesson3-1 難しいことを簡単に

氾濫する専門用語と難解用語

講師として、人に教える立場になると、「難しく説明することで立派に見られる」と勘違いしたり、「実力不足だと思われたくない」という理由から、自己防衛本能が働き、専門用語や難解用語を使ってしまう方がいます。

また、その道のプロであり、内容に精通している講師ほど、相手にとっては本来難しい内容でも、自分が知っていることは周りも知っているはずだと勘違いを起こしてしまい、専門用語や難解用語を使用するケースも見かけます。

前者においては、往々にして、自分の知識に自信がないことが原因で、自己防衛本能が働いてしまっているので、常に学ぶことに力を注ぐことが大切です。その上で、生徒の立場に立って、「難しい説明になっていないだろうか?別の言葉を使った方が伝わりやすいだろうか?」と考えることにより、「実力不足だと思われたくない」といった自己を中心とする考え方を減らしていくことができます。

後者においては、「簡単なことはわかりやすく」「難しいことはわかりやすく」伝えることが求められます。実践するにあたって、生徒にとって簡単なこと、難しいことを区別することから始めます。まずは、あなたがその分野について初めて勉強した時、「何が理解できなかったか」を自問自答してみてください。この作業を繰り返していくことで、生徒の知識レベルに合わせて、専門用語や難解用語の使い分けができる力がついていきます。

難しい事柄を「3STEP法」でわかりやすく説明できる

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ここでは、「記憶の干渉」を題材に、3つのSTEPを使い、わかりやすく説明できる術を学びます。違いをハッキリさせるために、まずは悪い説明方法です。

「では、『記憶の干渉』について説明していきます。『干渉』とは、二つ以上の同じ種類の波動が同一点で出合うとき、その時点で生まれる相互作用の現象であり、波の位相が同じなら互いに強め合い、反対の位相では弱め合います。したがって、記憶の干渉とは、同じ種類の記憶が交わると相互作用が強くなり、違う種類が交わる場合は相互作用が弱くなることを表します。また、記憶の干渉は2種類あり、ある事柄についての記憶が、後続に経験した記憶によって妨害を受けることを順向抑制とし、ある事柄を記憶することで以前に記憶した内容に阻害を受けることを逆向抑制と呼びます。」

いかがでしょうか。大半の方は、わかりにくいと感じたかと思います。原因は、冒頭から『干渉』の定義について説明していること、『同一点』など、普段聞き慣れない難解用語をかみ砕いて説明できていないこと、また具体的に理解するための例がないことです。

では、わかりやすく説明できるようためには、どうすればよいのでしょうか。3つのSTEPを踏んで説明していきます。

全体要約→詳細説明→専門用語3STEP法

  1. 最初に、全体要約のみ説明する
  2. 平易な言葉を使い、かみ砕いて詳細説明をする
  3. 専門用語を用いて、再度要約する

1,最初に、全体要約のみ説明する

「それでは、『記憶の干渉』について説明していきます。記憶の干渉とは、よく似た内容のものを覚えるとき、記憶されたもの同士がマイナスに影響する度合いが高くなる現象を指します。では、より具体的に説明していきます」

2,平易な言葉を使い、かみ砕いて詳細説明をする

「たとえば、あなたが昼食の買い出しにマクドナルドに行くことになり、ハンバーガーの種類を7個覚える必要があるとします。ハンバーガー、チーズバーガー、ダブルチーズバーガー、ビックマックバーガー、ベーコンレタスバーガー、フィレオフィッシュバーガーの6個を覚えて、最後の1個エッグチーズバーガーを思い出そうとしたが、初めの6個が邪魔となり、なかなか思い出せないといった状態が起こるかもしれません。

もし最後の一個が、同じ系統の商品ではなくて、極端な話フライドポテトだった場合、覚えられる可能性は高くなります。また逆に、最後の1個エッグチーズバーガーを覚えた途端に、先ほど前覚えていたベーコンレタスバーガーを忘れるという状態が起こることもあります。

3,専門用語を用いて、再度要約する

「このように、ある記憶が他の記憶によって影響されることを『記憶の干渉』といい、似た者同士な記憶ほど、影響を受けやすくなります。また、記憶の干渉は2種類あり、前に覚えた事が、今覚えたいことの邪魔をすることを『順行抑制』、後に覚えた事が、今覚えた事を忘れさせることを『逆行抑制』といいます』

いかがでしょうか。このように、かみ砕いて説明する事で内容がより具体的に理解できたかと思います。難しい事を簡単に説明するために3STEP法を活用して、生徒から、『先生の説明は本当にわかりやすいです!』といったお褒めの言葉がいただけるよう努力しましょう。

Lesson3-1 まとめ

  • 自分の知識に自信がなく、自己防衛本能が働いてしまっている場合は、常に学ぶことに力を注ぐことが大切。
  • ある分野の内容について詳しい場合などは、「簡単なことはわかりやすく」「難しいことはわかりやすく」を意識して伝えることが求められる。
  • 物事を分かりやすく説明するためには、「全体要約を説明し→平易な言葉を使い、かみ砕いて説明→専門用語を使って再度説明」といった3ステップを踏む。