生徒は、「〜になりたい」「〜に合格したい」といった未来の目標に向かって、自分自身がもっていない知識や技術など、いわゆる「専門知識」の学習を目的に講義に参加しています。
ですから、講師はその生徒の目的に対して、精一杯答えるられるように専門知識を教える必要があります。ですが、講師はそれらの専門知識を教えて終わりではありません。
講師における重要任務は、生徒に、どんなに些細なことでも構わないので、「行動」を起こさせることです。実際に行動を起こさせるためにはまず、「講師も最初から特別ではないんだ」「私にもできそうだ」と思わせることです。以下2つの話題を例に見ていきましょう
生徒のやる気を引き出す話
「自分の失敗談」と「他生徒の成功事例」
「自分の失敗談」と「他生徒の成功事例」で一つの文章を作り、同じ目線で取り組んでいるというイメージを待ってもらえるように、ここではあなたが過去に失敗したことや苦労したこと、そしてそれをどのようにして乗り越えてきたのかを伝えます。たとえば、社会人一年目の営業担当者を対象に、以下のような失敗談を話します。
「私が社会人一年目の商談時、緊張で自社の製品がいかに優れているかの説明に気を取られ、お客様のニーズを引き出せず契約を逃しました。この経験から私はまず、問題を引き出すためのヒアリングに特化し、とにかく場数を踏みました。その結果ニーズが手に取るようにわかり、自社製品の優位性に頼ることなくクロージングできるようになりました。私の講義を受けた生徒で、『先生のヒアリングノウハウのおかげで、受講後一ヵ月で2件の契約が取れました』と嬉しいご報告もいただけました。ですから、ヒアリングノウハウを重要な位置づけとし、受講してくださいね。」
このように、講師も営業としての失敗経験があり、そしてそれをどのようにした乗り越えてきたのか、また、他の生徒(過去の講義受講者)の現実的な成功事例を話すことで、共感を呼び、やる気を引き出す一助となります。

やる気を引き出す5つの実践方法
やる気が出ない理由として、「方法がわからない」「モチベーションが維持できない」などが挙げられます。講義をする時は、以下5つに注意してください。
- 知識レベル・経験に合わせた、行動指針を明示する
- 目標達成までの過程を分ける
- おおよその実行期間を伝える
- 実践しなかったらどうなるかを伝える
- 実践したあとの効果をイメージをしてもらう
それでは、英語の資格取得講座を例にとって説明していきます。
1.知識レベル・経験に合わせた、行動指針を明示する
「ヒアリングが苦手な人は、とにかく何度も解いて得点の取りこぼしを防ぎましょう。字幕なしで映画を見るのも効果的です。ヒアリングに問題がない方は、得点を落としやすい長文読解問題に焦点を当てて学習しましょう。どちらも最終的にボキャブラリーが物を言いますから、空き時間は単語テキストに目を通すなどの訓練をしてくださいね。」
このように、知識のレベルや経験に応じて、学習の方法を明示してあげると、自分に合った学習方法が選択でき、行動に移しやすくなります。
2.目標達成までの過程を分割する
「試験では、長文読解問題の回答時間が足りないという方が多いです。これは、冒頭から一つずつ読解しようとすることに問題があります。初めは、読解できる問題からどんどん回答を書き込み、得点を稼ぎます。次に、何となく概要がつかめる問題は、設問から答えを推測して解いていきます。最後に、時間いっぱいまで難題に取り組むことで目標得点に近づきやすくなります。」
このように、目標達成までの過程を分割してあげることで、その時点で取り組むべき課題が明確になります。
3.おおよその学習期間を伝える
たとえば、「一日60分、今日から毎日継続して学習していけば、早い人で、30日ほどでテキストを一周することが可能です」
このように、どれくらいの期間でテキストを終わらせることが可能なのか、などを伝えることで、30日後までの学習スケジュールを組むことができ、目標に向かって取り組む姿勢になります。
4.実践しなかったらどうなるかを伝える
「もしあなたが一週間勉強を怠ると、その分の学習を取り返すのは非常に困難です。この講義で身につけたことも十分に生かせない状態で受験に臨んでも目標達成は難しいです。再度、受験ともなれば受験費用もまた支払うことになります。ですから、目標達成のために、毎日の学習を怠らないように取り組んでいきましょうね。」
少々厳しめではありますが、実践しなかったらどうなるのかを伝えることで危機感を覚え、身が引き締まります。
5.実践した後の効果をイメージしてもらう
「本講座の勉強方法を、実践すればするほど自分の弱点も見えてきます、それに気づいた後はとにかくそこを重点的に勉強することです。そうした努力は、小さくとも必ず結果として成績にあらわれます。」
このように、実践した後の効果をイメージさせることで、学習する意義を見いだすことができ、自ら行動を起こしやすくなります。
以上を踏まえて、講師は、「専門知識」を教えて終わりではなく、「行動を起こさせる」ための手法として、「やる気を引き出させる」ことを忘れずに、講義を進めていくことが大切です。
Lesson4-4 まとめ
- 講師における重要任務は、生徒に、どんなに些細なことでも構わないので、『行動』を起こさせること。
- 「自分の失敗談」と「他生徒の成功事例」は、共感を呼び、やる気を引き出すことができる。
- 個々人に合った学習の方法を明示してあげると、自分に合った学習方法が選択でき、行動に移しやすくなる。
- 目標達成までの過程を分割すると、その時点で取り組むべき課題が明確になる。
- 与えられた課題を実践しなかったらどうなるかを伝えると、危機感を覚え、行動に出やすくなる。
- 与えられた課題を実践した後の効果をイメージさせると、学習する意義を見いだせる。