講義だけでは全員に伝わらない
講師のなかには、生徒の理解レベル、学習能力に差があるのは当たり前とわかっているものの、説明の難易度をどのくらいの水準に設定すればいいのか分からないという悩みを抱えてる方も少なくありません。
たとえば、説明の難易度を高く設定すると、知識レベルの高い生徒からは、「先生の講義は、多くのことを短時間で吸収できるので満足です」と良い評価をいただける一方、そのレベルに合わない生徒からは、「先生、すみませんが、これだけ難しい内容をこの短時間で一気に説明されても理解できません」という不満の評価をもらうこともあります。
この結果から、全ての生徒のレベルや能力に合わせて講義をするのは難しいとわかりますが、一人でも多くの生徒が、理解と学習成果を得られるように努力が必要となります。
個別指導する

個別指導でフォロー
講義内容を作るときは、ある程度、理解レベルと学習能力の対象者を絞り込み、そこに該当しない生徒については個別指導でフォローを行います。すると、説明の対象者の水準が決まり、説明方法やスピードも安定していきます。
また、個別指導のフォローは、どのようにするか、事前に決めておくのも大切です。たとえば、メール、電話、懇親会の場などです。これを決めておくことで、結果として一人ひとりがより理解と学習成果を得られる講義になるのです。
質問・相談内容を探る
新人講師はとくに、生徒の質問や相談内容は間違った回答さえしなければ問題ないだろうと考える方がいますが、それでは生徒の期待を裏切る可能性もあります。たとえば、理解レベルの低い生徒からの質問に対して、単に正確な回答をするだけでは、「そういうことが聞きたいんじゃないのにな」と言われることがあります。
さらに、その場では回答したが、その後「生徒の質問力が低い」で終わらせてしまうと、改善ポイントは見つからず、繰り返し問題が発生し、講師自身の信頼を失うきっかけにもなります。このような応対にならないためにはまず、生徒の質問や相談内容の中心をとらえる必要があります。つまり、生徒がどのような回答を期待しているのかを探るのです。
質問・相談内容の中心をとらえる3つのポイント
- まずは生徒の話を聞くことに徹する
- 質問や相談内容の関連事項について聞き出す
- 発言の多いキーワードを聞き逃さないようにする
- まずは生徒の話を聞くことに徹する
前述のような、生徒の質問力が低い場合でも、その質問力の向上を生徒に期待することはできません。ですから、自分の知りたいことやわからない点を短く簡潔に伝えることができる人は少ないということを前提に考えて、まずは生徒にたくさん話をしてもらい、聞くことに徹するのが大切です。このとき、ただ単に聞くのではなく、相槌や相手の言葉を繰り返してあげると、『話をきいてくれてる』『わかってくれている』ように感じ、質問や相談内容の中心を引き出しやすくなります。
2. 質問や相談内容の関連事項について質問する
聞くことに徹して、質問・相談内容の中心を探ることも大切ですが、そもそも生徒側が、質問したいことなどをうまく表現できていない場合は聞くだけでは不十分となります。そこで、話のなかで関連事項を見つけて、問いかけることをします。たとえば、
「先ほど、◯◯についてお話いただけましたが、たしかに◯◯は複雑な問題ですよね。関連事項の△△も複雑で難しいと感じられる人も多いですが、△△についてはどう思いますか?」
このように問いかけることで、生徒がわかっていないことを聞き出せる可能性が高くなります。
3. 繰り返すキーワードを聞き逃さないようにする
生徒の話に耳を傾けていると、繰り返し同じキーワードを使っている時があります。何度も使っているということは、そのキーワードにまつわる回答を求めている可能性があります。よって、そのキーワードを軸に説明をすることで、質問・相談内容の中心がズレにくくなります。
3つのポイントを実践することで、生徒が期待する回答に近づき、理解と学習成果を得られる講義になるでしょう。
Lesson6-2 まとめ
- 理解レベルと学習能力の対象者を絞り込み、そこに該当しない生徒については個別指導でフォローすると、説明の対象者の水準が決まり、説明方法やスピードも安定する。
- 生徒にたくさん話をしてもらい、聞き手に徹すると、質問や相談内容の中心を引き出しやすい。
- 質問や相談内容の関連事項について質問すると、生徒がわかっていないことを聞き出せる可能性が高くなる。
- 生徒が繰り返し使うキーワードを軸に説明することで、質問・相談内容の中心がズレにくくなる。