個別指導・質問や相談内容の「中心」を捉えることが、基本編とすると、生徒の「性格」まで踏み込んで応対することは応用編といえます。ここでは、人間の「心」の3つの働きを示す「知情意」をベースに、対応の仕方を見ていきます。
「知情意」3つの働き
まずは、簡単に「知情意」とは何かを説明していきます。
- 「知」とは、「知性」であり、筋道を立てて考え、判断・理解すること
- 「情」とは、「感情」であり、喜怒哀楽などの人間感情のこと
- 「意」とは、「行動」であり、目的を実現しようとする行動の基となる意志のこと
これら「心」の3つの働きは、すべての人間に備わっており、個々人によって3つの働きには差があると言われています。つまり、生徒一人ひとり、「知性」「感情」「意志」の優位性は異なるということです。
ここでは、わかりやすく、「知情意」を「知性優位タイプ」「感情優位タイプ」「行動優位タイプ」の3つの性格タイプに分類し、それぞれのタイプに応じてどのように、応対するのが望ましいかを見ていきます。
「知性優位タイプ」
このタイプに該当する人は、基本を忠実に正しい知識を身につけることを望み、自分自身で考えたり、調べたりして答えを探ることを好みます。よって、講師が必要以上の情報提供をする必要性はなく、考える時間を与えてあげるくらいが、単純に話を聞いて回答するよりも効果があります。
「感情優位タイプ」
このタイプに該当する人は、とにかく誰かに自分の気持ちを聞いてもらうことで、モヤモヤした気持ちがすっきりするのです。よって、何か問題がある場合でも、解決してもらいたいわけでもなく、解決策を知りたいわけでもありません。この場合は、こちら側もとにかく相手の気持ちを聞いてあげることが大切です。
「行動優位タイプ」
このタイプは、「考えるより行動」という気持ちが優先されており、実践を好む傾向にあります。よって、前者のように、考える時間を与えたり、気持ちを聞いてあげたりするのではなく、具体的な行動指針を示してあげることが効果的です。
「知情意」を応対に生かす
「知情意」の働きが理解できたら、実際にどのように応対に生かすのかを見ていきます。3つのタイプを瞬時に見極めるのは簡単ではありませんが、英会話の勉強方法の質問に来られた生徒と講師の会話を例に取って説明していきます。
生徒A
「先生、スピーキングが苦手なので、まずは語彙を増やそうと思います。どのように語彙を増やしていけばよいでしょうか」
講師の応対例:「いいですね!スピーキング力をあげるために、語彙を増やすのですね、◯◯さんにとって語彙を増やすためには、どうすれば良いと思いますか?」
生徒B
「先生、英語を勉強をしているのに、実際にしゃべることができなくて、学習することが億劫です。私には英語は向いてないのでしょうか。」
講師の応対例:「なるほど〜、しっかり勉強しているはずなのにしゃべることができなくて、英語学習が億劫になってしまうのですね。」
生徒C
「先生、スピーキング力を伸ばしたいので、一番効果的な勉強方法を教えてください、すぐに覚えたいんです」
講師の応対例:「学習意欲が高くていいですね!スピーキング力を伸ばすには、とにかく自分よりレベルの高い人と喋ることです。学習している言葉をどんどん使うと同時に、相手から新しい言葉を吸収するのです。この繰り返しがスピーキング力を伸ばすのに適していますよ。」
これらの例では、生徒A・B・Cがそれぞれどのタイプにあてはまるか簡単に推測できると思います。
- 生徒Aは、講師の意見を取り入れようとしつつ、最終的には自分で判断を下すことが考えられるため、「知性優位タイプ」。
- 生徒Bは、とにかく今の気持ちを聞いてもらいたいのだと考えられるため、「感情優位タイプ」。
- 生徒Cは、効果的な方法があれば、すぐに実践したいのだと考えられるため、「行動優位タイプ」
会話の通して、「知性優位タイプ」「感情優位タイプ」「行動優位タイプ」のどのタイプが強くあらわれているかを感じ取るよう心がけて、応対に生かしていきましょう。
Lesson6-3 まとめ
- 「知情意」は、すべての人間に備わっており、個々人によって3つの働きには差があると言われている。
- 「知性優位タイプ」の生徒には、講師が必要以上の情報提供をする必要性はなく、考える時間を与えてあげるのが効果的。
- 「感情優位タイプ」の生徒には、とにかく相手の話を聞いてあげるのが効果的。
- 「行動優位タイプ」の生徒には、具体的な行動指針を示してあげることが効果的。