Lesson1-3 他者評価

評価されることに慣れる

講師は、常に参加者の方から多角的に評価をされます。それらは講義内容に限らず、滑舌・声の大小・話すスピード・身なり・字がきれいかなど、あらゆる項目にわたって良い評価もあれば悪い評価もされます。講師として教育・指導する立場である以上、他者の評価から逃れることはできません。

講師の中には悪い評価を受けるのではないかという恐怖心からアンケートを実施しない方がいます。しかし、それを疎かにすることは、生徒の要望・欲求を充たす改善ポイントが分からず、支持されない講師になってしまいます。

支持される講師になるためにはまず、評価されることに慣れる必要があります。そこで、他者の評価をすることで広く知られている「アンケート」を基に、評価に慣れる訓練をしていきます。

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記名式アンケート

アンケートには『記名式』と『無記名式』があり、形式の違いにより評価の見方が異なります。

記名式は、名前を書かせるという理由から、本音で書けない場合があります。名前を名乗ってしまった以上、悪い評価は書きにくいものです。たとえば、講義の評価レベルが『満足』『ほぼ満足』『普通』『やや不満』『不満』の5段階評価だったとします。その生徒が『満足』『ほぼ満足』のいずれかを選択した場合、多少の善意が働いたとしても何らかのメリットを感じていただけたのは認識できます。

しかし、『普通』という評価の場合、本当は、「退屈で内容も全然参考にならないけど、悪く思われたくないし、かわいそうだから」というような、「批判者だと思われたくない」という内的心理や善意が働き、『普通』を選択してしまった可能性が含まれています。

これにより、記名式アンケートの場合、改善ポイントがやや不透明という見方ができます。また、このケースの場合、少し厳しい視点を持って、『普通』を『不満』と受け止め、評価に対する改善を進めることが大切です。

無記名式アンケート

本音が書きやすいので、『満足』『ほぼ満足』『普通』『やや不満』『不満』の5段階評価の結果にズレが生じにくく、改善すべきポイントがわかりやすいですね。ですが、無記名式は講義内容に関する評価ではなく、単に人間として好きか嫌いかを評価されることもしばしばあります。たとえば、『性格が嫌い、講師に向いてない、見ていてイライラする』など、人格を否定するような内容が含まれるケースもあります。

このようなケースは、小規模な講義であれば誰が書いたか特定がしやすいので、あまり起こり得ませんが、大規模の講義となると起こり得ます。ですが、仮にあなたがこのような評価をもらっても、他生徒の評価が99%良いのであれば、単に相性が合わないと認識し、深く考えないことです。よって無記名式アンケートの場合、改善ポイントがわかりやすいが、稀に攻撃的な評価を受けるという見方ができます。

アンケート結果の受け止め方

アンケートの見方を踏まえた上で、あなたへの評価に対する受け止め方について見ていきます。

褒め言葉

講師デビュー直後というのは、不慣れな部分もありますから、少々手厳しい評価を受けることがあると思います。ですが、まずは悪い評価ばかりに目を奪われず、褒め言葉に耳を傾けることが大切です。悪い評価ばかり気にすることは、無理をしてでも生徒の希望に合わせたり、自分より生徒を優先してしまうことは、あなたらしさを失ってしまい行動や言葉に制限が出てしまいます。ですから、まずは「楽しく受講できた」「丁寧な説明でした」などの褒め言葉を自信にし、心の支えにすることが大切です。

受け流す力

人により評価が良いと自意識過剰になり、評価が悪いとひどく落胆するなど感情の落差が激しい方がいます。これらの感情のコントロールが上手にできない方は、悪い評価こそが『正当な評価』だと思い込み、ひどくネガティブになり絶望してしまいます。そうならないために、前述でお話しした人格否定のような明らかに相性が悪い場合や誹謗中傷に近い評価に関しては、受け流す力』を養うことが必要です。

正当な評価

正当な評価には、少しつっこんだような厳しい内容のものもあります。たとえば、一人ではなく複数人から、「先生のことをとても尊敬しており、今日の講義をとても楽しみにしておりました。ですが、私としては先生の技術を学びたく、机上の学習より実践の学習を望んでいたので、少々がっかりしました。厳しい感想となりましたが、今後も先生の活躍を期待しておりますので、よろしくお願い致します。」

という評価の場合などは、期待されていた分かなりショックを受けるかもしれません。こうした正当な評価は真摯に受け止めて、参加者の予備知識レベルの確認不足が原因なのか、集客時に「実践に特化した講義」とうたっているが、実際の内容とズレはないか、などの改善ポイントを探して次に生かすことが大切です。

他にも、正当な評価の中ですぐに改善できるマイナス要因は後回しにしないことが大切です。声が小さくて聞き取りづらいという評価であれば、意識したり、友人に聞いてもらうなどで改善できます。テキストの字が小さくて目が疲れたなどの評価は、参加する年齢層などを参考に、文字の大小を変えるなどの配慮で改善できます。

Lesson1-3まとめ

  • 記名式アンケートで、「普通」以下の評価は「不満」だと認識し、少し厳しめに受け止める。
  • 無記名式アンケートは、評価の結果にズレが生じにくいが、稀に攻撃的な評価を受ける恐れがある。
  • アンケート結果は、まず悪い評価より良い評価(褒め言葉)に耳を傾ける。
  • 誹謗中傷に近い評価は、「受け流す力」を養う必要がある。